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しばらくバルアシェ書いてなくって、「忘れてない?」というつっこみが・・・。
いや、別事書いてたりして・・・。
でも、ちょっと反省して、SSレベルで久しぶりに書いて見ました。
「ある日の二人」ってことで。
ええ、本当に短いお話ですよ。
いや、別事書いてたりして・・・。
でも、ちょっと反省して、SSレベルで久しぶりに書いて見ました。
「ある日の二人」ってことで。
ええ、本当に短いお話ですよ。
▼▼▼
(頼まなきゃ、よかった・・・。)
(頼まなきゃ、よかった・・・。)
目の前で、ぶつくさ言いながら、書類と格闘しているバルフレアの姿をみて、アーシェはため息をついていた。
***
ダルマスカは王制を敷いているけど、基本的には民衆の意見を反映できるような行政体制を整えている。
行政機関を運営するためには、当然、予算というものがある。
予算の管理をするための財務部門はあるけれど、このチェックを年に1回やらなくてはならない。
側近の協力を得ながら、これをこなさなくてはならないのだけど、正直なところ、とても苦手な分野なのである。
ファルツやナーエから助言はもらっても、「最終的には陛下が諫言を申し上げるべきですから」とか言われて、結局自分で考えなければならない。
もう二日がかりで数字が並んだ書類を見ているけれど、どうにも今ひとつわからない・・・。
困ったものだ――と、私室でぼやいていたら、俺でよければ少しは見てやるが-、とバルフレアに声をかけられたのだ。
困ったものだ――と、私室でぼやいていたら、俺でよければ少しは見てやるが-、とバルフレアに声をかけられたのだ。
幾ら、信頼できる彼とはいえ、ダルマスカの決算書を見せるのもどうかと迷ったものの、最終的には情報公開する内容だし、正直、これ以上、自分一人で考えるのに限界を感じていたのも事実である。
それで、じゃあ、お願いと頼んだわけである。
***
「だめだ、これじゃ。」
ばさりと書類の束をテーブルに投げ出し、いきなりだめ出しをされた。
「えっ!どうして!?」
「だって、よく見てみろよ。公益部門の代理人手数料の総額が高すぎる。いくら仲介が大変だとはいえ、この請求は多すぎだ。代理人の見直しをするとか、入札制度をもう少し厳格にするとかしないと、身包み剥がされるぞ?それと、食料輸出入において、相場とかけ離れた額で計算がされてる。大方、他国が一番売りたい時期に輸入をして、一番安く買い叩かれる時期に輸出をしているんだ。こんな商売をしていたんでは、いずれ予算は真っ赤になっちまうぜ?」
「でも、交渉を行ったうえで、適正金額で取引をしているはずよ?いくら何でも、そんな状況になるはずないわ!?」
多少、興奮気味に話すアーシェを前に、バルフレアは、やれやれといった顔で首を振った。
「本当に、ダルマスカってのはお人よしの国だからな。交渉力次第で、両者の<適性金額>ってのは変わるのさ。まあ、それでも、これだけ潤っているんだから、元々の国力が相当高いんだろう。だからと言って、こんなことをいつまでも続けていたら、いずれは干上がってしまうだろうから、早々に、行政機関の人材にてこ入れでもするんだな。」
バルフレアが、相場だろうといった金額で書類の端に計算したメモを見ながら、アーシェは肩を落とした。
「そうね・・・、よく考えたら、戦役後に慌しく人材登用をして、それ以降の人事問題については、皆に任せきりだったわ・・・。」
「人ってのは、適当な目標がなければ、技術もあがらない。技術ってのは、何も俺みたいな機工技術のことばかりではなく、金融でも政策立案でも必要なものだ。うまくやる気を引き出してやるのがお前の‘仕事’なんじゃないのか?」
「・・・。」
いらついたような表情の彼を前に、アーシェはすっかりしょげた気持ちになっていた。
-そうだったかも・・・。
日々の仕事にもすっかり慣れて、私自身が、少し、いい気になって、仕事の手を緩めていたのかもしれない。-
はぁ、とため息をつく彼女を見ながら、バルフレアは多少表情を和らげた。
「すまない、少し言い過ぎたかもしれないな。」
「いいのよ。私自身の問題だから――。」
「いや、別に、お前を責めようと思って言ったわけじゃないんだ。ただ、俺は、いつも一人で決めて判断してきたから、些事であっても俺自身が気が済むように物事を整理したくなるんだろうな・・・。いつもの癖が出ただけだ、悪かった・・・。」
「ごめんなさい、気を遣わせて。」
自分の至らなさに、多少のショックを受けてはいたものの、フォローをしてくれる彼の言葉に温かみを感じ、アーシェは少しほっとしていた。
和らぐ彼女の様子を見ながら、バルフレアは目を細めつつ、声をかけた。
「なあ、」
「何?」
「で、仕事を手伝ったんだから、『褒美』はくれるんだろう?」
いつもの軽口で話す彼に、アーシェはあっけにとられつつ、くす、と笑った。
「また、『褒美』?まったく――、今度は何がほしいの?」
「あの、部屋着は飽きた。」
部屋着というのは、以前、女中頭が手に入れてきたTシャツのことである。
「だったら、ローブでも何でもあるじゃない。傷んでもいないわよ。」
「俺のじゃない。お前の。」
「え?」
「あんな色気も何もない部屋着は飽きた。お前もそう思うだろう?」
何となく、嫌な予感を感じとったアーシェは、ゆっくりと首をふった。
「ううん、飽きてない!あの部屋着は気に入ったから、これからも着るわ。」
大きく首をふったはずだが、彼はまったく見ておらず、とても、聞き入れる耳を持ちそうにもない。
そう、それもわかりきっていることだ――。
「そんなに遠慮するな。ちゃんと俺が用意してやるって。」
「いい!本当にいいから!自分で何とかするわ!」
「仕事が忙しいんだろう?そんな些事は俺に任せておけって。じゃあ、準備しておくから。」
笑いながら部屋を出て行こうとする彼の背中に、彼女は声をかけた。
「お願いだから!普通のモノにして!」
切実な声をあげる彼女にむかって、バルフレアは振り向くと口端で笑った。
「何、想像してる?」
「―――!」
「期待してるなら、お望みのままに――、女王陛下。」
恭しく頭を下げると、彼はさっさと部屋を出て行った。
ばか――という声とクッションが投げつけられた音がした扉を背に、バルフレアは、笑いながら廊下を歩いていった。
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